中国史の副読本
最近なぜか陳舜臣、中国ものにはまっているので読んでみた。著者があとがきに「よく歴史上のすぐれた人物に学べ、といわれるが、正直なところ、私は彼らに学ばねばならなくなるのはご免蒙りたい。 私は読者の皆さんに、ここに登場した十六人の傑物がほかの生き方ができなかったのだろうか、と思いながら読んでいただきたい。なぜなら作者はそう思いながら書いたのだから。」 だが、私が思うに、著者のこだわりはそうせざるをえなかったヒーローたちを描写しようとしているように思える。 しかも少し視点を変えたヒーロー観である。たとえば戦国時代を終わらせた秦の始皇帝、漢を開いた劉邦、モンゴルのチンギスハーンなどは世界史に名を残すヒーローだが、彼らを取り巻くキーパーソンとして16名の傑物を記述している。始皇帝の代わりに呂不韋を、劉邦の代わりに張良をチンギスハーンの代わりに耶律楚材をである。 こういった魅力的な人物を描く筆者が好きだし、素材を提供してくれている中国史にも敬意を払いたい。
珠玉の中国短編集
陳舜臣が選んだ中国史上の傑物16名の話が詰まった1冊。 名君や名軍師、名将といった選別でなく傑物というチョイスの仕方が面白い。 誰もが一癖も二癖もある人物で、短編集とはいえ16の人生を堪能できる。 中でも、耶律楚材と曹操は長編化されており、 陳先生の好きな人物、書きたい人物の集大成といえる16人なのだ。 この傑物伝は陳舜臣の中国歴史小説の醍醐味を味わえる最も手頃な作品といってもよいだろう。
中央公論社
中国畸人伝 (中公文庫) 中国任侠伝 (徳間文庫) 中国美人伝 (中公文庫) 中国の歴史〈3〉 (講談社文庫―中国歴史シリーズ) 中国の歴史〈2〉 (講談社文庫)
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